慢性便秘症

慢性便秘には、腸の狭窄など物理的な問題で便秘になる「器質性」と、腸の動きなどの問題で便秘になる「機能性」に分かれます。ここでは「機能性」の便秘について解説します。

毎日排便がないと便秘?

便秘とは、慢性便秘症診療ガイドライン2017では、「本来体外へ排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」と記載されています。したがって、2日に1回しか出なくても、苦痛なく快適に生活できていれば便秘とは言いません。逆に毎日排便があっても、少量しか出なかったり残便感があったり、強くいきまないと出ないなどの苦痛がある方は便秘と言えます。

つまり、何日に1回出るかではなく、排便による苦痛があるかどうかが問題なのです。

便秘は治療が必要?

便秘を患っている方は人口の5-25%と言われています。
「たかが便秘くらいで命にかかわるものではない」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、人によっては毎日非常につらい思いをされ、QOL(生活の質)を大きく低下させる場合もあります。

また、便秘症の方は強くいきむことにより血圧が上がるなどの影響で、心筋梗塞や脳卒中などの心血管イベントの発症率が高く、生命予後が悪いという報告もありますので、放置せずにしっかり治療した方がよいと考えます。

原因

便秘の原因は様々なものがあります。

  • 食物繊維の摂取不足
  • 運動不足
  • ストレス
  • 薬剤性
    精神科の薬、一部の降圧剤、医療用の麻薬など
  • 糖尿病
    糖尿病が進行し神経障害を合併すると、便秘の原因になります。
  • パーキンソン病
    神経症状よりも先に便秘症状から発症することもあります。
  • 腸の形態によるもの
    大腸の曲がり角が強い方は便が滞留し便秘になることがあります。
  • 肛門の機能によるもの
    軟便なのに排便に非常に時間がかかるなどの症状があります。

治療

治療法は原因によっては異なりますが、生活習慣の改善によってよくなる可能性はあります。

食事療法

食事摂取後には胃-結腸反射といって腸が動き出し便が出やすくなります。ですので、必ず朝食は抜かずに摂るようにし、食後は便意がなくてもトイレで5分間ほど排便を試みる習慣をつけましょう。

食物繊維は1日20g程度の摂取が良いといわれています。ただし、食物繊維の中でも水溶性繊維と不溶性繊維があり、水溶性繊維が特に便秘に対し改善効果が高いといわれています。不溶性繊維の摂りすぎは便のかさを大きくしてしまいます。バランスを考え、不溶性:水溶性 2:1程度で摂取するのがいいと思います。

不溶性繊維を多く含むもの
  • 穀類
  • 野菜
  • 豆類
  • キノコ類
  • 海藻
  • 甲殻類(エビやカニ)の殻
水溶性繊維を多く含むもの
  • 昆布・わかめ
  • こんにゃく(グルコマンナンはOK,ふつうのこんにゃくは不溶性)
  • 里いも・長いも
  • 大麦・オーツ麦
  • もずく
  • ナメコ
  • オクラ
  • ごぼう

アルコールやカフェインは利尿作用があるため結果的に水分不足になる可能性があります。飲み過ぎに注意しましょう。

プロバイオティクスとプレバイオティクス

プロバイオティクスとはヨーグルトに含まれる乳酸菌などの微生物のことです。プロバイオティクスの摂取により腸内環境をよくすることにより、便秘、腹痛や腹部膨満感、ガス症状を改善する可能性があります。

プレバイオティクスとは、プロバイオティクスのエサになるもので、プロバイオティクスを増やす作用があります。水溶性食物繊維やオリゴ糖などがあります。オリゴ糖はエサになるだけでなく、浸透圧の関係から腸管に水分を分泌させ、下剤の役割も果たします(摂りすぎでお通じがゆるくなるのはこのためです)。

オリゴ糖を多く含む食品は、たまねぎ、ごぼう、アスパラガス、大豆、はちみつ、きなこ、バナナなどがあります。

運動療法・マッサージ

運動不足ですと腸の動きも悪くなり便秘の原因になります。定期的な運動を心がけましょう。

また、腸の曲がり角がきつい場合、便がひっかかり滞留することがあります。運動ができなくても、体操のような体を捻ったりするような動きも有効と思います。おなかをさするようなマッサージも有効な場合があります。

薬物療法

便秘の薬は大きく分けると、「刺激性下剤」と「非刺激性下剤」に分けられます。

刺激性下剤は、腸を刺激し、動かして出すという薬で、非刺激性下剤の主な作用は腸の水分を多くして便を柔らかくし出しやすくするというものです。
刺激性下剤は市販の下剤で多く含まれている成分ですが、即効性がありすっきりしますが、連用しているとくせになりやすく、徐々に効きにくくなります。
基本的には非刺激性下剤をベースにして、それでも出ないときに刺激性下剤を頓用で用いるという方法が望ましいです。

下剤についての詳細はこちらのブログもご参照ください。

非刺激性下剤も近年は選択肢がたくさんありますので、ご自身に合う下剤を調整させていただきます。
便秘で悩まれている方は山科駅前おかだクリニックでご相談ください。