胃食道逆流症(GERD)・逆流性食道炎・咽喉頭逆流症(LPRD)

胃食道逆流症(GERD)・逆流性食道炎・咽喉頭逆流症(LPRD)

逆流性食道炎、胃食道逆流症(GERD)、NERD…様々な言葉がありますのでまずは整理したいと思います。

胃食道逆流症(GERD)とは、胃酸が食道へ逆流することにより、胸やけや呑酸(酸っぱいものが上がってくる)症状が生じたり、食道粘膜に炎症を起こす病態です。

逆流性食道炎とは、内視鏡検査をして、食道粘膜に炎症を起こしている状態をといいます。

GERDと逆流性食道炎はイコールではなく、食道粘膜に炎症がないのに逆流症状がある人もいれば(非びらん性胃食道逆流症、Non-Erosive Reflux Disease、NERDといいます)、逆に内視鏡で炎症があるのに無症状の人もいます。

胸やけがある方の中で、逆流性食道炎の所見を内視鏡検査で認めるのは30%程度と言われています。ということは多くの方は内視鏡で異常がないのに症状があるというNERDの方ということです。

胃食道逆流症の患者数は近年増加しています。理由としては食生活の欧米化や、ピロリ菌感染者が減少してきたことにより胃酸分泌能が上がったためと言われています。

原因としては、胃酸過多になるような食物摂取や、腹部に圧がかかるような姿勢や生活、ほかには食道の蠕動運動に異常がある方や、食道と胃の境界部分が緩んだために胃が食道側へ飛び出してしまう食道裂孔ヘルニアという疾患などがあります。

また、逆流だけが原因ではなく、NERDの中には知覚過敏が原因ということもあると言われています。

診断


逆流性食道炎の場合は内視鏡検査(胃カメラ)で食道に炎症所見を確認することができます。
炎症がない場合は、胃酸を抑える薬を用いて症状の改善があるかどうかで判断します。
厳密には食道に胃酸が実際逆流しているかどうか、pHなどを測る必要がありますが、このような検査ができる施設は非常に限られています。

治療

生活習慣の改善

食生活を気を付けることで改善することもあります。

生活面では腹部の締め付け、重いものを持つ、肥満、円背(猫背)、ストレスなどはできれば避けたほうがいいです。

喫煙も食道の括約筋を緩める原因となるため、禁煙は大切です。

食事面では、早食いや食べ過ぎを控えることや、高脂肪食、柑橘類、アルコール、甘いものなどは胃酸分泌を刺激するため避ける、就寝まで4時間以上空ける、食後にすぐに横にならないなど気をつけましょう。

就寝時は可能であれば頭を高くしたほうが逆流しにくくなります。

薬物治療

薬物治療では、胃酸分泌を抑えるプロトンポンプ阻害薬(PPI)や、P-CABという薬が標準薬として使われます。

多くの患者さんはこれで改善しますが、内服しても効果が不十分な場合は粘膜を保護する薬(アルギン酸塩)や漢方薬(六君子湯、半夏瀉心湯)、消化管運動を助ける薬(アコチアミド、モサプリド)を補助的に用いることもあります。

胃食道逆流症で、逆流するものは胃酸だけというわけではなく、胃酸以外の胃内容物によって症状が起きている可能性もあります。

その場合は薬物治療でもなかなかよくならない場合があり(PPI抵抗性GERDといいます)、この場合は逆流を防ぐための外科手術をすることもまれにあります。

咽喉頭逆流症(LPRD)

胃内容物の逆流により、食道だけではなく喉や耳鼻科領域、呼吸器のほうまで症状を引き起こすことがあり、咽喉頭逆流症(LPRD)と言われています。

症状としては喉の異物感、詰まっている感じ、ヒリヒリ感、声のかすれ、咳や喘息、肺線維症や副鼻腔炎などがあります。

LPRDを症状から診断するために、自覚的症状評価(reflux symptom index: RSI)というものが用いられてます。14点以上がLPRD疑いとされます。

こちらも治療は胃食道逆流症(GERD)と同じで、生活習慣の改善や薬物治療となります。これらの治療に抵抗性の場合は手術が検討されることもあります。